前回同様、マーケットインの考え方について、具体的なマーケット情報をいくつかお見せしながら、どのように商品開発に活かしていくのか考えたいと思います。
- マーケットインの考え方を製品に活かす その1
- マーケットインの考え方を製品に活かす その2
- マーケットインの考え方を製品に活かす その3(現在のページ)
洗顔料、化粧水、美容液、パックのマーケットデータのうち、前回は洗顔料と化粧水について考えてみましたので、今回は美容液とパックのデータを見ながら、それぞれの商品開発について考えていきます。
(参照データは、弊社がwebアンケートを活用して20代~50代女性500名に対して調査した結果)
まずは美容液を見てみましょう。
図1は、「美容液の購入頻度」を聞いた結果になります。
3ヶ月に1回以上購入している割合は、約45%と全体の半数未満となります。半年に1回と回答している人まで加えても、全体の3分の2程度になっています。一方、「ほとんど購入しない」、「全く購入しない」と回答している割合は、全体の26.5%となっており4分の1以上の女性が美容液はほとんど購入していないことがわかります。
化粧水の上にポイントとして更に潤いなどの効果を与える美容液。使用している割合は前回の化粧水などと比較すると、だいぶ少なくなります。
次に図2を見てみましょう。
図2は、美容液における現在使用しているブランドの使用期間になります。
例えば、3年以上同じブランドの美容液を使用している割合は、女性全体の26.0%となっています。 女性全体の4分の1以上がずっと同じブランドを使用しています。また、1年以上同じブランドの美容液を使用している人を加えると、全体の4分の1近くが継続的に使用していると言えるでしょう。
また、「現在は使っていない」割合が21.8%ですので、その人たちを除くと、約半数が1年以上同一ブランドを使用していることになります。
一方で、3ヶ月未満の割合は24.3%と全体の4分の1以下ですので、前回お伝えした洗顔料や化粧水などと比較すると、長く同じブランドを使用するのが美容液の傾向と言えます。
最後に図3をご覧ください。
こちらは美容液の購入価格帯を聞いた結果になります。
全体の3割が5,000円以上と回答しています。今までの洗顔料や化粧水と比較すると、かなり高価格帯に寄っていることがわかります。
1,000円未満の商品を購入している人もいますが、全体の1割程度です。また、1,000円未満、1,000円台、2,000円台、3,000円台の各美容液を購入している割合が値段が上がってもほとんど変化ないのも特徴でしょう。
要は、基本的に美容液は他の化粧品と比較すると高価格帯に寄っていますが、通常安い商品ほど購入客数が増えるのに対し、美容液は安いからといって購入客数が増えるわけではないというのが言えます。
「価格」というわかりやすい指標ではなく、ポイントで使用する高価格なスキンケアだからこそ、「自分に合うブランド」を選択する傾向が強いのではないでしょうか。
継続しやすく高価格帯である美容液。
自社ブランド全体のリピーターへと繋げていくために、美容液の購入を促すことが一つの手段として有効と言えるのではないでしょうか。
さて、続いてパックについて考えてみます。
皆さんもご存知の通り、韓国製品をはじめ、パックに参入する企業が増えています。Web通販でも数年前からパックによる新規顧客獲得に成功している企業を最近ではよく見かけます。
図4は、「パックの購入頻度」を聞いた結果になります。
3ヶ月に1回以上購入している割合は、全体の4分の1以下となっています。その一方で、「ほとんど購入しない」、「全く購入しない」と回答している割合は、全体の43.7%と半数近くなっており、特定の女性が購入するカテゴリーと言えます。
次に図5を見てみましょう。
図5は、パックにおける現在使用しているブランドの使用期間になります。
例えば、3年以上同じブランドのパックを使用している割合は、女性全体の17.3%となっています。1年以上同じブランドのパックを使用している割合は、女性全体の26.3%となっています。現在使用していない39%の女性を除き、パックを継続して使用している人のみで見ると、パック使用者の43.2%が1年以上同一ブランドを使用していることになります。
一度リピートすると、比較的長く使われるのがパックの特徴となっています。
そして、図6をご覧ください。
こちらはパックの購入価格帯を聞いた結果になります。
全体の4割以上が1,000円未満と回答しています。韓国製品をはじめ安価な商品が多く、それらが主流であるのがパック業界と言えるでしょう。
しかし、図7を見てください。
図7は図6を年代別に見たものになります。
こちらを見ると年代が上がるに連れて購入価格帯が変化しているのがわかります。若い世代ほど購入価格帯は低く、高い世代ほど購入価格帯は高くなっています。
一度リピートすると長く使い、かつ年代に応じて購入価格帯が異なるパック。しっかりとターゲットを定めて丁寧に展開していくことが重要と言えるでしょう。
マーケティング支援
販売する商品および店舗(ECサイト)におけるコンセプトとターゲットの一貫性
慶応義塾大学理工学部卒業後、株式会社船井総合研究所に入社。化粧品メーカーを中心に、様々な業種・企業のマーケティング分析、戦略構築を実践。約50社の化粧品メーカーを集めたセミナーの主宰も行う実績を持つ。現在、株式会社プラスリードの代表として、企業のマーケティング戦略の構築やコンサルティングを行っている。「問題解決のためのデータ分析」を2013年9月に出版。