独立後には、所得と納税額を申し出る確定申告を自分で行わねばなりません。申告方法には、簡易な「白色申告」と、帳簿付けと決算書の提出が必要な「青色申告」の2種類がありますが、メリットがあるのは断然「青色申告」です。今回は、その違いについて説明していきましょう。
青色申告は白色申告よりも節税効果が大きく、申告方法によって10万円もしくは65万円の「特別控除」を受けることができます。
また、帳簿付けの手間から白色申告を選択する人も多くいますが、2014年以降は白色申告者にも帳簿付けが義務付けられることになっています。65万円控除のほうが断然おトクではありますが、「面倒な帳簿付けが嫌だから青色申告はちょっと……」と考えているのなら、まずは簡易な帳簿付けで10万円の控除が受けられる方法を選択してもいいでしょう。
☆ 10万円控除の場合
・単式簿記の記帳でOK
・決算時は、貸借対照表を除く青色申告決算書(3ページ)が必要
・ 現金主義の記帳
→現金の入出金があった時点を基準として記帳をする方法です。
☆ 65万円控除の場合
・複式簿記の記帳が必要
→仕訳帳、総勘定元帳、固定資産台帳、現金出納帳など
・決算時は「損益計算書」「貸借対照表」が必要
・発生主義の記帳
→現金の入出金ではなく、お金の動きが確定した時点を基準として記帳をする方法です。
※どちらも帳簿や決算関係書類は7年間、領収書などは5年間の保存を義務付けられています。
とはいえ、65万円控除を受ける場合でも、会計ソフトなどを使えば初心者でも簡単に青色申告できるものです。借方・貸方の複雑な仕訳で難しい「複式簿記」の帳簿付けも、会計ソフトに日々の支出と収入を入力していけばOK。青色申告決算書も、帳簿へ正確に記入してあれば、あっという間に作成することができるので、まずは挑戦してみることをオススメします。
青色申告を選択した場合、10万円控除と65万円控除のどちらの方法であっても、白色申告にはない大きなメリットがあります。
赤字を3年間繰り越せること、家族を事業専従者とすることでその給与を経費にできることなどに加え、「減価償却の特例」という特典もあります。従来、資産を一括経費として計上できるのは、10万円未満の「小額な減価償却資産」のみでしたが、30万円未満までの資産を一括して必要経費にすることができます。
☆青色申告のその他メリット
・純損失の繰越と繰戻し
→3年間、赤字を繰り越せる!
・ 事業専従者給与の必要経費算入
→家族への給与を経費計上できる!
・ 減価償却の特例
→30万円未満の資産を一括で経費計上できる!
・ 貸倒れ引当金の設定や一定の割増償却
→年末に残っている売掛金や貸付金などの売掛債権・金銭債権に対して、一定の額を経費計上できるなどの特典も!
これらの特典を考えると、やはり青色申告のほうが断然メリットは大きいと言えます。
これから独立して青色申告を選択する場合も、白色申告からの切り替えを行う場合も、注意したいのは「事前の書類申請が必要である」ということ。
「所得税の青色申告承認申請手続」の書類に記入し、納税地を所轄する税務署長に対し、持参もしくは郵送にて提出することが必要です。
また、この提出については期限があるので要注意!!
☆これから開業する場合は?
→まずは開業1カ月以内に「開業届(個人事業の開廃業等届出書)」を提出し、開業2カ月以内に「所得税の青色申告承認申請手続」を提出すること。
※その年の1月15日までに開業した場合は、3月15日までに提出すればOK!
☆白色申告から切り替える場合は?
→青色申告を行う予定の年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請手続」を提出すること。
せっかく青色申告で確定申告の準備をしていても、「税務署に持参した当日、昨年中に手続きをしていなかったからムリだと判明した」という失敗談はよく聞きます。申請手続きには期限があることをお忘れなく!
また、青色申告できるのは「事業所得」「不動産所得」「山林所得」のいずれかの所得がある個人事業主です。会社員の収入は「給与所得」なので青色申告はできませんが、副業で3つのうちいずれかの所得がある場合には青色申告ができます。また、青色申告の対象にならない所得として、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料や放送謝金、株の配当金や投資信託の分配金などが挙げられます。
青色申告には帳簿付けなどの義務は発生しますが、節税効果が高いとともに受けられるメリットも多くあるので、ぜひチャレンジしたいところです。帳簿付けに不安がある場合には、税務署や青色申告会(青色申告をしている小規模事業者で組織されている納税者団体)などに相談してみるといいでしょう。